永徳の後の蕪村の爽やかさ。「美を紡ぐ 日本美術の名品」展

東京国立博物館で開催中の「美を紡ぐ 日本美術の名品」展は、
そのサブタイトルにあるように「雪舟、永徳から光琳、北斎」
だけでなく、近代の美術や工芸品までの名品が41点並べられて
います。それプラス、いくつか修復した作品についてはその参考
資料も展示されています。

展示の目玉は永徳の「唐獅子図屏風」と「檜図屏風」でしょう。
これが入り口入ってすぐのところにドーンと展示されています。
いうまでもなくどちらも大作です。近づいて見るだけでなく
離れても見たい。作品の前に十分なスペースがほしい。
けれどこの展覧会の会場は本館の1階と2階の特別室です。
狭い部屋を4つつないで無理やり会場に仕立てた感が否めません。
そこにたくさんの客が入っています。
永徳の2つの屏風は一番広い特別室に展示されていますが、
それでも十分な鑑賞空間は確保されていません。
特に「檜図屏風」は、離れて見ようとすると「唐獅子図」を
見ている人とぶつかるし、近づこうとすると隣の部屋へ行こうと
する人とぶつかります。落ち着いて見てられません。
堪能したという気になりませんでした。

やや不満を抱えながら2階に上がり、その掛け軸の前に立ったとき、
一陣の爽やかな風が吹いて来たのでした。
蕪村の「新緑杜鵑(ホトトギス)図」。何度か見たことはあり決して
嫌いではありませんが、それほど強く惹き付けられるというほど
ではありませんでした。ところがこのときは、その「力強い淡さ」に
全身が引き込まれてしまいそうになりました。
ワタクシが思うに、それはきっと永徳のエネルギー溢れる屏風を
見た後だったからでしょう。
〈俺が俺が〉と他の者を押し退けんばかりの自己主張の塊のような
作品に対して、蕪村のこの絵はなんと淡く穏やかなことか。新緑の
木々を吹き抜けてくる風が確かに感じられるのでした。

この絵と出会えただけで満足できましたが、もう一つ、驚いたものが。
「太平楽置物」です。高さは30センチくらい、銅や銀、赤銅などの
金属で作っています。その精巧なことこの上ありません。何よりも
ワタクシが驚いたのは、その衣装の、なんというのでしょうか、後ろに
引きずった部分。
赤銅で作っていると思うのですが、布の質感がすばらしい。とても
金属製とは思えませんでした。作者は海野勝みん(王へんに民)という人で、
明治天皇の注文で作ったようです。
後で常設展の能の部屋を見たら太平楽の人形が飾られていて、そちらは
布の衣装を身につけていました。参考にしてねとさりげなく展示して
いるのだろうと感じました。

この特別展の会場で可笑しかったのはおばさん二人連れの会話でした。
尾形乾山の「八橋図」と北斎の「西瓜図」が隣り合って展示されて
います。解説のプレートはそれぞれの右側に貼られているのですが、
その位置は作品と作品のほぼ真ん中なのです。
二人連れのおばさんは「西瓜図」を見ながら、どうやら解説の
プレートは「八橋図」のを見ているのです。

スイカの絵なのに「八橋」だって。上に何かぶら下がっているのが
「八橋」なのかしらね。江戸時代にはスイカっていう名前はなくて
八橋ってよんでいたのかしらね。

んなわけないでしょ!もっと素直に疑問に思いなさいよ!
たっぷり笑わせていただいたのですが、担当者はもう少し作品に
近づけて解説を貼るという配慮も必要なんだなと、痛感した次第
です。

というように、不満はあったものの、終わってみればけっこう
楽しかった特別展でした。

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