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zoom RSS 笑いと卑語の痛烈な米国批判『ビリー・リンの永遠の一日』

<<   作成日時 : 2017/06/04 16:33   >>

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ベン・ファウンテンの『ビリー・リンの永遠の一日』はアメリカの
資本主義の冷酷さ、非人間的な本質、そしてアメリカ国民の
無邪気さ、傲慢さ、薄っぺらさなどを痛烈に皮肉り批判して
います。

主人公ビリー・リンはブラボー部隊の一兵卒。
部隊は対イラク戦争で大きな勲功を上げます。その戦いぶりが
テレビ放映されたので隊員たちは全米のヒーローになります。
その褒美として2週間の休暇が与えられ凱旋帰国します。

休暇といったって、しかし、我が家でのんびり過ごせるわけでは
ありません。
隊員たちは連日さまざまなイベントに狩り出されます。
その内の一つ、感謝祭の日に行われたフットボール(アメラグ)の
試合に招待され、スタジアムで過ごした長い長い1日を詳細に
描いています。

スタジアムを仕切るのはチーム(ダラス・カウボーイズ)の
オーナー。
ブラボー部隊の活躍を映画にしたいプロデューサーも隊員たちに
同行しています。
隊員たちはセレブも含めた多くの観客から次々に声をかけられます。
それらは儀礼的挨拶的な内容ばかり。
チームの選手の中には、自己顕示欲丸出しで自分も戦争に参加
したいと言い出す奴までいます。

さらにスタジアムのスタッフやチアリーダーたちと言葉を交わし、
ビヨンセなどの芸能人ともステージをともにします。

隊員たちはみんな若い。ビリーは未成年。他の隊員も多分20代。
若いゆえに、こんな状況に異常に興奮したり逆に白けたり、
あるいは煩わしがったり怒ったりなど、たえまなく感情や意識が
揺れ動きます。

オーナーたちの彼ら隊員の扱い方は、英雄でもなんでもなく、
単なる客寄せであり、オーナーの力の誇示にすぎないことが
わかります。氷雨の降る寒いスタジアムにすることもなく放って
おかれたりもします。

ステージ係との喧嘩とその仕返し、またチアリーダーとビリーとの
真面目な愛、あるいはイラクに戻る前に部隊から脱走させようと
する姉の画策などなどを織り交ぜて、長い一日がていねいに
現実味を帯びて描かれます。

この一日の出来事がワタクシの目の前で起こっているように
感じるのは、若者たちの間で飛び交う卑語や俗語だらけの会話の
リアリティのせいです。
この訳文が生きています。
若者たちの意識や心理、感情が見事に炸裂しています。
その会話や感情を通して、アメリカの軍隊、戦争、そして国民性、
資本の論理などが明確に伝わってきます。
ていねいに作られたドキュメンタリー映画を見ている気になります。
作者はビリーに密着しつつ、少し上空のドローンから全体を
くまなく映し撮っているようです。
それがミドル級の重いストレートとなって読者を圧倒する力に
なっているのでしょう。

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