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zoom RSS 不屈の闘いと愛と友情。『ふたつの海のあいだで』

<<   作成日時 : 2017/04/21 17:24   >>

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大きなスイカの中心部、あの赤くてサクサクしたところを
南イタリアのカラブリア地方では「雄鶏の鶏冠」と呼ぶ
らしい。
ジョルジョ・ベッルーシはスイカが大好きですが、その
最も美味い「雄鶏の鶏冠」部分は、自分の大事な者、
愛おしい者に与える。気前のいい(というほどのことでも
ありませんが)さっぱりとしたお祖父さんなのです。

カルミネ・アバーテの『ふたつの海のあいだで』は、この
ジョルジョ・ベッルーシの強靭な意志と不屈の闘いを経糸に
して、そこに様々な形の愛と、老人どおしの友情、そして
隠然たる勢力を誇示する暴力犯罪組織の存在などを緯糸に
して織られた、大河小説のような重量感のある小説です。

「ふたつの海」とはイオニア海とティレニア海。この二つに
挟まれた南イタリアのカラブリア地方を舞台にして物語は
展開します。
語り手はジョルジョの孫のフロリアン。両親とハンブルクに
暮らしています。夏になると母の出身地であるカラブリア
地方に連れてこられます。

そこは夏は苛烈な暑さに襲われ、さらに地元を仕切る
犯罪組織の暗然とした重苦しい影が覆っていますが、
人々はそれを口には出しません。

このような風土の中で、ジョルジョはかつて「いちじくの館」
として知られていた宿の再建を夢見ています。
そんな祖父にフロリアンはなじめず反発さえしています。
(「いちじくの館」には、かつてアレクサンドル・デュマと
画家のジャダンが立ち寄り、ノートと絵を残していった。
それらは家宝として代々受け継がれています。)

ジョルジョと犯罪組織との壮絶な闘い、決して曲げることの
ない意志、弛まぬ実行力。その姿にフロリアンも次第に
引き込まれ、高校を卒業するころには積極的に協力する
ようになります。

完成間際の「いちじくの館」は、犯罪組織によって一度
爆破されますが、ジョルジョはくじけません。
ついに完成させ、館のカギすべてをフロリアンに渡します。
そして、娘婿の父親(有名な写真家で、昔からの友人)
と一緒に旅に出るのですが・・・

この小説をより豊かに味わい深いものにしているのは、
さまざまな愛の形です。
お祖父ちゃんとお祖母ちゃんの信頼に満ちた愛、
フロリアンの母と、できれば仕事のために自分の世界に
閉じこもりたい銀行員の父との愛、フロリアンの父方の
祖父と年若い妻との愛、そしてフロリアンとマルティーナとの
若く止めようのない愛などなどが描かれます。
とりわけフロリアンとマルティーナとの愛は、年とともに
成長していく様子が鮮やかに記されます。

苛酷な自然環境ながら、自分たちの故郷に寄せる愛と
喜びと悲しみとを見事に描き上げた作品です。

ところで、ここに出てくる犯罪組織は「訳者あとがき」によれば
「ンドランゲタ」という組織の由。いま勢力を北イタリアは
いうに及ばず中南米にまでに伸ばしているという。
この作品に魅せられて、同じ作者の『風の丘』を読み始めた
のですが、そこにも「ンドランゲタ」が出てきます。
この地方で生きるためには、この犯罪組織の影におびえ続け
なければいけないのでしょうか。

今号が最終号となった雑誌『考える人』には、島村菜津さんの
「シチリア、マフィアと闘う島」というルポが載っており、
シチリアで定着してきている反マフィア運動が紹介されて
います。
若者たちが始めた「さよなら、みかじめ料」運動や、マフィアに
よる「みかじめ料」要求をはねつけたワイナリー、そして
「反マフィアの歴史美術館」などなど、現在の様子が報告されて
います。
かつてマフィアが行った暴虐の数々−行政や司法まで支配
している−も紹介されており、背筋が冷たくなります。
多大な犠牲の上に現在の運動があることがわかります。

「ンドランゲタ」はかつてのマフィア並の勢力を誇示し、
カラブリア地方を支配しようとしているのでしょうか。

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